医療者と患者の間にある「ＱＯＬの違い」…もっとも適切な治療を選択するために

　２人に１人ががんを経験するといわれています。がん患者と向き合う医療者は、日常の診療の中で何を思い、感じているのでしょうか。国立がん研究センター東病院（千葉県柏市）の医師らが、患者さんとのエピソードを語ります。今回は、頭頸部がん外科治療の専門家で副院長（診療担当）の林隆一さんです。

林隆一さん

　「先生の趣味って何ですか？」。ある日の外来で６０代の女性の患者さんから聞かれました。答えに窮していると、「今、ボランティア活動していてだんだん周りの人から頼られるようになって楽しいんです。趣味のダンスも再開しようと思ってるの」とのこと。

　私の専門は、頭頸(とうけい)部がんの外科治療です。頭頸部がんとは聞き慣れないかもしれませんが、口腔(こうくう)がんや咽頭がん、喉頭がん、甲状腺がんなどがこれに含まれます。頭頸部領域には会話や食事などに関する機能が集まっており、がんの治療とともに治療後の機能の温存が大切になります。

　その女性は、咽頭がん患者さんで手術後会話が不自由になり、食事にも時間がかかるように

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