［柳澤秀夫さん］肺がん（３）がんの特集番組の司会断る…引き受けてくれた俳優はのちに急逝

　平日午後９時からのＮＨＫのニュース番組「ニュースウオッチ９」の初代メインキャスターを務めていた２００７年秋、肺にがんが見つかった。検査と治療のため、休養に入った。

　肺の一部を切除する手術を受けた。病理検査の結果、がん細胞の悪性度が高く、再発の心配もあると指摘された。医師の勧めに従い、抗がん剤治療を受ける。副作用は苦しく、髪も抜けた。番組を正式に降板する。悔しかった。

　手術後、半年で職場に復帰したが、常に再発の不安におびえていた。そんな時、がんを特集する番組の司会を依頼された。「がんとどう向き合ったのか、経験を語ってほしい」という。だが、「まだ自分のことを語るほど気持ちのゆとりがない」と断った。

　司会を引き受けてくれたのは、俳優の児玉清さんだった。まな娘を胃がんで亡くしていた。その児玉さん自身も、１１年にがんで急逝している。

　今や日本人の２人に１人が、がんと診断される時代。医療の進歩に伴い、生存率は向上している。それでも「『がん』というインパクトのある２文字を受け入れたくなくて、目にするのも嫌でした」。自らの病名を公表することはなかった。

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