［医療ルネサンス］病と旅＜５＞夫婦、親子へ戻る「処方薬」

末期がんを患う人の夫婦旅行をかなえる伊藤さん（右）（２０２２年６月、本人提供）

　医師の伊藤玲哉さん（３６）が、病と闘う人の願いをかなえる旅行会社「トラベルドクター」（東京）を起業したきっかけは、研修医時代に病棟で受け持った男性から「旅行に行きたい」と言われたことだった。

　余命わずかな男性の希望をかなえようと、先輩や旅行会社に相談したが、「何かあったら危ない」「やめた方がいい」などの反応だった。旅が実現しないまま、男性は亡くなり、悔しさが残った。

　「今の医療では治せない病気の人でも、医師である自分が付き添えば旅をすることができるのではないか」。５歳で母を病気で亡くした経験からも、最期の願いをかなえることは、家族にも重要だと実感していた。

　休日にボランティアで旅行の付き添いを始めた。それを知った上司から「そのやり方では、週に１人ぐらいしか対応で

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