［安田章大さん］髄膜腫（２）１２時間の大手術　術後に感じた「孤独」と後遺症

　脳に見つかった腫瘍は良性だったものの、緊急手術が決まった。診断を受けても、どこか人ごとのようだったのは、腫瘍が思考や感情をつかさどる前頭葉にできた影響らしかった。

　全身麻酔で意識が遠のいていく間も不安はなく、「ここで命果てるなら、そういうもんやな」と冷静に受け止めていた。

　１２時間に及ぶ大手術は、無事に終わった。手術直後の記憶はほとんどない。手術室から集中治療室（ＩＣＵ）に移る直前、母が父に無事を知らせようと、写真を何度撮ろうとしても、ほとんど白目をむいていた。

　その後、高熱が出て、顔は別人のように腫れた。それでも、その状況を受け入れられる自分もいた。半面、命の危機に直面し、病室で一人きりになり「孤独」を実感した。当時の複雑な心情をつづった歌詞にメロディーを付けたが、未発表曲としてしまってある。

　手術から１か月もたたないうちに仕事に復帰した。だが、手術痕が見えないよう、舞台の稽古ではベレー帽をかぶり、人前では、ウィッグを着けた。金色に染めた髪が伸びて黒髪が見えてきても染め直せない。病気を公表していないが故の生きづらさを感じた。

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