「夫婦関係」とかけて「新型コロナウイルス」と解く　その心は？…パンデミックを乗り切るために求められるリスクコミュニケーション

　だいぶ昔の話になりますが、当時早稲田大学にいらした哲学者の西條剛央さんのもとで、「質的研究」を学んだことがあります。そのときのワークショップで試みた研究テーマが「夫婦関係が『なあなあ』になること」でした。最初はラブラブ（死語？）だったカップルの関係がいつしか「なあなあ」になっていく、その現象を構造化するという、なかなかにエキサイティングな経験でした。

　さて、一言で「夫婦関係」といっても、そのコトバがどういう現象を指しているのかは簡単には言えません。「夫婦」というコトバは一様な現象をコードしていない（示していない）のです。仲の良い夫婦もいるでしょうし、冷え切った関係の夫婦もいるでしょう。多くの人は自分の経験を基盤に「夫婦」という概念を規定するでしょうから、「夫婦」というコトバが惹（じゃっ）起（き）するイメージは人それぞれということになります。

　多様な夫婦のあり方を理解するためには多くのサンプルサイズが必要になるでしょうが、一生に何十回も結婚する人は稀（け）有（う）でしょうし、また、人生で何十回も結婚するような稀有な人の体験は、一般化するのが困難なのではないでしょうか（こういうのを、アウトライヤーといいます）。

　そう、多くの人は自分の経験に寄せて「夫婦」を論じますが、実はそれぞれがバラバ

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