働く高齢者を守れ、国の労災防止策「努力義務」…件数右肩上がりでも対策企業２割

　高齢者の労働災害が増加の一途をたどっている。国は改善に向け、防止策を企業の努力義務とする労働安全衛生法の改正に乗り出すが、実効性の確保を懸念する声は根強い。深夜勤務が続いた後に亡くなった高齢男性の遺族は、「誰もが安全に働ける社会にしてほしい」と訴える。（中村俊平）

　厳しい暑さに見舞われた２０２０年の夏、首都圏で独り暮らしをしていた７０歳代の男性が自宅で死亡した。心筋 梗塞（こうそく） だった。２４時間営業のガソリンスタンドで契約社員として働いていた男性。遺族が残されたスマートフォンを見ると、上司に宛てた未送信のメッセージが残っていた。

　「連続勤務してしまい。暑さのため体調が悪くて本日の勤務は休みたい」。不審に思った遺族が弁護士に頼んで男性の勤務実態を調べると、亡くなる直前、負担の大きい深夜から未明の勤務が６日間、続いていたことが判明した。

　弁護士によると、運営会社は健康診断を男性に受けさせておらず、高血圧の持病を把握していなかったという。遺族側はその後、「安全配慮義務に違反した」などとして、勤務先などに損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こした。

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