ベニシアにとって最後の桜になるのかと思うと僕は心が晴れなかった…人はどうやって死を受け入れるのか

　２０２３年４月中旬、京都・大原の自宅でベニシアを介護し始めて半年がたちました。春が訪れ、日に日に暖かくなってきました。大原を囲む山々を眺めると、森の緑に交じって白いコブシの花が咲いているのに気づきます。やがて、近所の桜並木も桃色に染まってきました。天気が良ければベニシアを車いすに乗せて、花見をしながら２０分ぐらいの散歩に出かけました。

ベニシアが元気なころは、大原を流れる高野川の岸辺の桜並木を見に出かけた（２０１１年４月）

　桜を見たらもちろん喜ぶはずなのに、ベニシアの表情は不安なままでした。今はもうほとんど目が見えないようです。見舞いに来た友人のノブコさんやアマンダさん、次女のジュリーや、訪問看護師のユカボンたちは春の 陽(ひ) を浴びて爽やかな顔をしています。でも僕は、「この桜はベニシアの生涯で最後の桜になるのだろう……」などとついつい思ってしまい、複雑な気持ちになります。 可憐(かれん) な花を見ても心は晴れませんでした。

　これまでベニシアを診てくれた日本バプテスト病院の 湊(みなと) 先生や、毎週、

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