［柳澤秀夫さん］肺がん（５）治療から５年が過ぎて初めて闘病経験を明かす…NHK退局後も記者を続ける決意

　「ドアが開いて先生がどんな顔でこちらを見るか。その瞬間が怖くて」。２００７年に肺がんの手術を受けてから、再発や転移がないか検査を受け続けた。「どう生きたいのか。がんにずっと問われているような気がしていました」

　３年後、医師から「仮免許です」、５年後に「免許皆伝。もう来なくていいですよ」と言われた。治療から５年が過ぎれば、再発や転移のリスクが低くなり、治癒の目安とされる。山を越したと思った。

　１２年１１月、がんの免疫療法をテーマとするＮＨＫスペシャルに出演した。「今日は当事者の一人としてスタジオに来ています」。番組の冒頭でそう告げた。初めて肺がんを経験したことをテレビで明かした。

　「伝える仕事をしている以上、病気に正面から向き合って自分の言葉で語る必要がある。ようやくそれができました」

　６５歳でＮＨＫを退局。現在は、テレビ朝日系「大下容子ワイド！スクランブル」などにコメンテーターとして出演する。２０年、記者人生を著書「記者失格」（朝日新聞出版）にまとめた。真実に迫ろうとも、言葉を失い、困惑する――。己のふがいなさと、それでも記者を続けていく決意をつづった。

続きを読む