［医療ルネサンス］大腸がん＜１＞「肛門」温存手術広がる

　「もしかして血便？」。２０２２年７月、東京都内の美容室で働く 碇（いかり） 潤一さん（４５）が自宅で用を足した後、便器に血が付着しているのに妻が気づき心配そうに尋ねてきた。血便のことは少し前から自覚していたが、「何となく大丈夫だろう」と思っていた。妻に強く促され、近くの総合病院で内視鏡検査を受けると大腸にがんが見つかった。

　がん専門病院での治療を希望した碇さんはその後、国立がん研究センター中央病院（東京都中央区）を受診した。がんは肛門から４センチの近さにあり、最初に診てもらった総合病院では手術により人工肛門（ストーマ）を造ることになると告げられていた。

　本来はストーマから臭いが漏れることはないものの、美容師の仕事は客との距離が近い。「ひょっとすると臭うかも」と不安を抱いていたが、同病院大腸外科長の金光幸秀さんは肛門機能を温存する選択肢があると説明した。括約筋間直腸切除術（ＩＳＲ）といい、自分の意思に関係なく動く肛門の内側の内肛門括約筋を切除し、肛門とその外側にある外肛門括約筋は残すことで排便機能を保つ手術だ。

　肛門

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