文化功労者で作家の加賀乙彦さんが死去、９３歳…「宣告」「帰らざる夏」「永遠の都」

　拘置所で精神科医として働き、死刑囚らと接した体験を基にした小説「宣告」などで知られた作家で日本芸術院会員、文化功労者の加賀乙彦（かが・おとひこ、本名・小木貞孝＝こぎ・さだたか）さんが１２日、老衰で死去した。９３歳。告別式は近親者で済ませた。

加賀乙彦さん（２０２０年３月撮影）

　１９２９年、東京生まれ。陸軍幼年学校進学後に終戦を迎え、ドストエフスキーなどの小説を読みふけった。東大医学部を卒業後、５５年から東京拘置所で精神科医として勤務。死刑囚の精神状態などの調査を経験し、その後、研究のためフランス留学した。

　帰国後、医師として勤務する傍ら小説の執筆を始め、北仏の精神科病院を舞台にした「フランドルの冬」で６８年、芸術選奨文部大臣新人賞を受けた。陸軍幼年学校時代の体験をもとにした「帰らざる夏」で７３年、谷崎潤一郎賞を受賞した。７９年には「宣告」で日本文学大賞、８６年には「湿原」で大佛次郎賞を受けた。

　「宣告」のモデルとなった男性死刑囚らとの交流を通して宗教に関心を持ち、５８歳の時にカトリックの洗礼を受けた。キリスト教の弾圧が進む中、信仰を捨てなかった大名を描く「高山右近」などの

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