８世紀に創建された法華寺の蒸し風呂　語り継がれる伝説とは…毎年６月に信徒ら向け体験入浴会

　ぽかぽか陽気に包まれた３月半ばのある日、古都・奈良に向かいました。日本のお風呂の歴史を知る上で重要な施設を訪ねるためです。

　近鉄大和西大寺駅で下車して東に約２キロ。平城宮跡を右手に眺めながら足を進めると、法華寺にたどり着きました。この寺の蒸し風呂「 浴室（からふろ） 」が目的地です。

　この寺は聖武天皇の妻・光明皇后が８世紀の天平時代に創建しました。この浴室で、光明皇后が、薬草を使った蒸し風呂で１０００人の病人を癒やし、その 垢（あか） を流すことを誓ったという伝承が残っています。伝承によると、最後の１人は重い病気で皮膚がただれていましたが、皇后が口で 膿（うみ） を吸い取ったところ、その患者が突然、光り輝く阿閦仏になったといいます。

　哲学者の和辻哲郎（１８８９～１９６０年）もこのエピソードが気に入り、著書「古寺巡礼」の中で「（西洋の蒸し風呂も）もとはアジアから出たもので、あるいは天平の温室と同一の源泉を持っているのかも知れない」と想像力を膨らませています。

　日本銭湯文化協会によると、当時広まりつつあった仏教では、僧侶が自らの心身をきれいにする 斎戒沐浴（さいかいもくよく）

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